近作と山辺構造設計事務所との協働

3年程前から、
構造設計を山辺豊彦先生の代表の山辺構造設計事務所に依頼し、
協働して頂いています。

山辺構造事務所では、木造の学校施設や中層ビルや、
もちろんRC造・S造の構造設計もされています。

山辺先生は、これまであまり研究されてこなかった、
在来軸組構法住宅の設計手法について、
独自の実大実験などをもとに研究し、その方法論を分かりやすく解説され、
設計者・施工者らに木構造の正しい知識を広めようと精力的に活動されており、
著書も、「ヤマベの木構造(新版)」等の著書を出されています。

工務店向けの勉強会でも頻繁に講師もされており、交流もありましたが、
私が設計事務所で修業していた時代に、木造の中高層の集合住宅のプロジェクトがあり、
その際に構造設計をお願いしていたこともつながり、縁となりました。

木造の住宅ですと、
確認申請時には構造計算の提出の必要はなく、社内で構造計算をしていることが多いです。
構造計算書が必要となる、長期優良住宅の物件等の場合は、
長期優良住宅のサポートセンターに依頼していました。

サポートセンターによる構造計算は、数値入力によるものになりがちで、
どちらかというと、
意匠と構造設計の相互の連携が余り図れないものになることが多いです。

今回、山辺構造事務所にお願いすることにより、
設計事務所で行われているような、
意匠と構造の設計の融合が図れているではと考えています。

設計の意図する空間に対しての、構造的なアプローチの提案や、その裏付けもあり、
設計の自由度が上がったと思います。

コスト的には構造設計料、等がプラスとなりますが、
その効果は大きいと考えています。

ここで、内容は変わりますが
近作の写真を挙げます。

国府津の家
「山並を臨む薪ストーブのある住まい」
小田原市国府津の静かな住宅地にあります。
薪ストーブのある住まいです。
南側隣地には住宅が建つことが想定され、東側に山並が臨めることから、
東側に吹抜と、山並を見渡せる大開口を計画しました。
南側にもアプローチを兼ねた庭が取れる為、
大開口の掃き出し窓と1・2階のデッキを計画しました。
プランは、1階LDKに和室のあるシンプルな間取りで、
2階の寝室から、吹抜を通して山並が眺められます。
また、ネコ3匹も同居するように、キャットウォークやトイレの場所など工夫しています。

東側の山並みを眺める吹抜けの連続する窓
20201012_155031
吹抜けと寝室・子室・薪ストーブ
20201012_154701
1階LDKの連続する化粧梁
20201012_151937+
アプローチ側の外観と大開口。
20201012_155652trim

鎌倉市津の家
「森へ抜ける家」

敷地は鎌倉市津にあります。7区画ほどの開発地に建ちます。
選ばれた敷地は、南側に引込み道路があり、北側は森に囲まれています。
北側の森が一段上がっているのと、南側はアプローチと駐車場になりそうなので、
2階リビングとし、
「南側の道路側の抜け」、「北側の森への抜け」を意識したプランニングとなりました。
1階は、アプローチ・玄関を思い切って奥に配置。寝室、子室を南側にしています。
建物の平面形を、敷地に沿ってL字型に。
ダイニングを道路側の抜けの方に、リビングを森の抜けの方に。
階段を真ん中に配置し、緩くLDを区切ってくれます。
水回りは北側の森を眺められる位置に。1階の北側は土間収納を設えました。
敷地の特性を読み、L字プランとし、
それぞれの方向へ、「抜け感」を生かした住まいになったと思います。

外観。黒塗装の焼杉
20201011_095522trim2

道路側から森の抜けるようなL字のプランです。
20201028_134818
中央に階段があります。開口部は全開放できる障子が仕込まれています。
20201028_135018
ダイニング
20201028_135002
リビング
20201028_135507+
森に抜ける台形FIX窓
20201028_135626trim

鵠沼桜が岡の家」
「南東の景色を取り込む住まい」
敷地は鵠沼桜が岡、閑静な住宅地の開発地の一区画です。
アプローチ道路が段々上がっており、また、7-8段の階段で敷地に上がります。
その為、周りより少し高台になっており、
方向(方位)により、周囲の眺め(抜け)が得られます。
今回は南東方向の松林・海側の景色を、出来るだけ住まいに取り込む様に計画しました。

プランの構成について、
1階にダイニングキッチン、2階にリビング、
音楽室(趣味室)、洋室×2、寝室、サンルーム、WIC、水回り、
が求められました。
部屋数が通常より多い為、プランと外観の構成を何度も考えながら、計画しました。
結果、低い切妻屋根と深い軒が得られた外観になっています。
高さ制限も厳しいことから、天井高さが1階は2221mmと抑えていますが、
天井いっぱいのサッシを取り入れている為、低く感じません。

部屋の構成が多い中、シンプルなL字の間取りに納め、天井や屋根を低く抑える等、
出来る限りの設計手法を使いながら、伸びやかで開放感のある住まいになったと思います。

南側外観
20201210_154608trim
アプローチ見上げ
20201210_155047(0)
東側外観
20201210_155416trim
眺望と外観
20201210_155617trim
1階ダイニングキッチン、天井高さは2,221mm。
20201210_151034
1階ダイニングキッチン
20201210_151340trim
全開放サッシと障子を開放
20201210_152211
キッチン正面
20201210_152132
2階リビングと和室
20201210_152937
2階リビングからの眺望
20201210_152632
天井高さ1,600mm~3寸勾配で上がる和室
20201210_153014

高橋一総