紀州の森・「山長商店」-会社見学を終えて

妹尾大地です。

少し間が空いてしまいました。
会社の新しい取り組みについてお知らせです。
実は、2024年度からYouTube動画(主にルームツアー)撮影の取り組みを行っております。
これまで会社から何かを発信するということはあまり行ってきませんでしたが、
発信をしないと届かないものもあると思いましたので取り組むことにしました。
お引き渡し後にも、お客様には快く撮影をお許しいただき感謝でいっぱいです。
是非、皆様のお言葉、感想、ご意見等ありましたら、InstagramやYouTubeのコメント欄でも良いのでいただけると嬉しいです。
細かくいつもチェックしてます。

■株式会社加賀妻工務店 公式YouTubeチャンネル
→https://www.youtube.com/@kagatuma.

本題です。
11/13、14と2日間に渡り社員研修という形で和歌山県に行って参りました。
弊社では、構造材として山長商店さんの材料を採用させて頂いております。
お付き合いをさせて頂いてから、(2024年現在)30年を経過しようとしています。
私自身初めての経験で、この2日間を通して、山の偉大さに圧倒され、木に対する愛着を持つことが出来ました。
同時に「山長ブランド」の名を汚さないよう、襟を正される思いになりましたのでここに記します。

■山長商店さんについて
創業は江戸末期。紀州「木の国」で200年以上、木を育ててきた会社です。
山長商店さんは紀伊半島南部に約6000ヘクタール(東京ドーム1300個分ほど)の自社林を所有し、
植林から育林、伐採、製材、プレカット加工までの一貫生産体制を確立しております。
元々、従来の国産材には、供給量や材質(強度や含水率)が「不安定」であるという弱点がありました。
それらを最先端の乾燥、検査技術と豊富な在庫で解決し、JAS規格に基づく高品質な木材を常に供給できる体制を整えています。

■山に入ってみて
実際に山に入ってはみましたが、自社林とは言え規模が大きすぎて、どこまでが山長商店さんの山で、そうでないかといった境目は全く分かりませんでした。
また、2001年にも山長商店さんにお邪魔をしているのですが、その際に植えさせて頂いた木の成長も見ることも出来ました。
「祖父が植え、父が育て、私が伐り、我が子、まだ見ぬ孫の為に植える。」という言葉が会社のHPにも記載がありますが、
木の真っすぐな成長を見ると、そこからこの言葉の真意を感じ取ることが出来ました。
時代、人は変われど、木の文化は継承されていくこと、ここに「不変」の偉大さもあるのだなと思いました。
人間の枠から出てくる思惑や意図、理屈を以ても、木はただ抱擁し受容してくれる懐の深さを想像しました。
山長商店さんの榎本会長より2001年に訪れた際の写真ファイルを頂き、時代も人も丸っと変わってしまったのに変わらない山を見て、この時代錯誤に感激しました。
木を見て山を見ずではないですが、時に大きな視点、枠組みで物事を捉えることで感じ取れる、見える景色があるということ、実際の山をみてそれが腑に落ちる経験をしました。
人はどこまでいっても自然の一部なのだと思います。

■紀州材について
和歌山県は、県面積の77%が山林で、言うなれば山の県です。(神奈川県だと39%)
また、その山林の95%が民間が所有する民有林となっており、民有林が多かったことで、いわゆる「業」や「商い」という側面での林業技術の向上に起因します。
その結果は、木材の強さを表す*ヤング係数にも表れています。桧はE110、杉はE90と、この数字は一般的な同種の木材と比べ遥かに高い値となります。
一般的には、植林は1haあたりに約3000本程度と言われておりますが、山長商店さんでは、1haあたり約5000~5500本を植林しています。
また、長年にわたり職人の手で間伐を繰り返し行い、その結果、年輪幅が細かく整った材面の美しい材料が育ちます。
山長商店さんも住宅建築用材としては日本一の高品質の木材と自負している理由が分かります。

*ヤング係数
木材の曲がりの量を「たわみ」と言い、一定の力を加えた時にどれだけたわみにくいかを表す指数。

 

■工場見学をしてみて
木が木材になるまでには、時間と工数が掛かります。
流れとしましては、
植林→育林→伐採→製材→乾燥→品質検査→選別→プレカット
となり、山長商店さんはこの流れを一気通貫し、紀州産木材を製品化しております。

これだけの流れを一気通貫することで、安定した材料が生産・流通が出来ることが伺えます。
私も深く理解は出来ていませんでしたが、林業は細かく分業化されています。
一般的に耳にするのは、山の所有者は造林業者に発注して造林(木を植えて育てること)を行います。
数十年後に木を切り、運び出すのは伐採業者。丸太の売買取引は木材市場。
仕入れた丸太をカットするのは製材業者。それを売る木材店が関わっています。
分業化のメリットもあると思いますが、それを考えるより、情報伝達や責任所在に関わる弊害が出てくる可能性があるかと思います。

■JAS認定
山長商店さんは、国産無垢材を扱う工場として、「機械等級区分構造用製材」JAS認定工場Aタイプの認定を受けております。
また、商品にはFIPC(一般社団法人木材表示推進協議会)の認証を得て、合法木材である証明と共に「原産地」表示を行っています。
今までの国産無垢材(製材品)は、乾燥が不十分で狂いが大きく、強度にもバラつきがありました。
そうなると品質の見極めも難しく、強度と安定性が求められる構造材としては、「集成材」が向いているとされていました。
JAS製材品は、JAS法による品質の表示が義務付けられ、その表示から容易に強度・含水率の性能を確認することが出来ます。
当然ながら、含水率・強度にも一定の基準が設けられ、JAS法下では製材品の品質が安定します。
ただ大事な点を補足すると、JAS認定にも「機械等級」区分の他に、「目視等級」区分があります。
こちらはざっくり言うと文字通り目視による等級のもので、実強度、実含水率の精度の高さに違いがあります。

機械等級区分:一本ずつグレーディングマシンで検査、等級区分を行う。一本ずつ全て異なるシリアルナンバーが記される。
目視等級区分:木の見た目や節の数によって強さを評価する。

※JAS認定
「農林物資の企画化及び品質表示の適正化に関する法律(JAS法)」に基づいて、農林水産大臣が制定した日本農林規格(JAS規格)による検査に合格した製品に、JASマークを付けることを認める制度。

山長商店さんは、機械等級による検査を行っております。
下記写真が実際の工場内の様子です。

 

■【マイクロ波含水率測定器】…木材を透過したマイクロ波の減衰率を計測し木材含水率を算出します。
■【動的ヤング係数測定器】 …木材を打撃することによる振動周波数から強度を測定します。 含水率測定と同じライン上で、連続して行われます。

 

■最後に
これまでも山長商店さんの材は日本一と自負してきましたが、今回の経験を通して、それが間違っていなかったことを再確認することが出来ました。
父にはよく言われますが、仕事を通して関わる人とはたくさん話をして、互いにプライドを持って同じ目線で熱い家造りが出来るのかを確かめること、社長の思い人柄も大切と教わってきました。
私が言うのはおこがましさもありますが、山長商店さんとはそういったお付き合いをさせて頂いているといった自負があります。
仕事をする上でのスタンスの話しになりますが、大事なことだと思います。

今回の経験を通して、私自身が自分の家(木)に愛着を持てる、そんな家に住みたいなと今まで以上に強く思えるようになりました。

最後になりますが、担当の真鍋さんには2日間に渡り案内をして頂きました。
会社の見学会にも応援に来てくれたりと、いつも大変お世話になっております。
この場でも感謝申し上げたいと思います。
今後とも末永くお付き合いをさせていただけますと幸いです。